はじめに
今年 5 月に、当社オリジナルの IoT デバイスシリーズ ELmote® の LTE-M モデルの試作をご紹介しました。そのとき掲げたのが、「LTE-M のメイン基板に、用途に応じた拡張基板を載せる」という構成です。

上が LTE-M v2 基板。下の左から、RS485 拡張基板、ブレーカー状態検出用拡張基板、シリアル+SD カード拡張基板です。
5 月以降、拡張基板を替えながら、実際にいくつもの用途で動かしてきました。本記事では、その 5 つの用途をまとめてご紹介します。あわせて、5 つの用途を 1 本のファームウェアと 1 本のスマホアプリで切り替えられるようにした話も書きます。
LTE-M v2 基板のおさらい
ELmote® LTE-M モデルは、次の要素で構成しています。
- LTE-M メイン基板(LTE-M v2 基板):LTE-M モジュールと ESP32 を搭載
- 拡張基板:用途に応じて、センサーや機器とのインタフェースを差し替える
- 専用組電池:容量 12Ah
- 防水ケース:屋外設置を前提とした構造
メイン基板は、ふだん deep sleep で眠っていて、決まった時間か、接点の変化などのきっかけで起きます。起きたら計測し、LTE-M で送り、また眠ります。ゲートウェイは要りません。
実証した 5 つの用途
| # | 用途 | 拡張基板 | つないだもの | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 距離の遠隔計測 | RS485 拡張基板 | RS485/Modbus の距離センサー | ELmote® に LTE-M モデル登場 |
| 2 | 土壌水分の遠隔計測 | RS485 拡張基板 | 株式会社センシフィア様の土壌水分センサー(試作機) | 電波で"土の水分"を読む |
| 3 | ブレーカーの監視 | ブレーカー状態検出用拡張基板 | ブレーカーの補助接点・警報接点、電源(PSU)出力 | 見張りの電波はキャリアに任せる |
| 4 | 画像の送信 | シリアル+SD カード拡張基板 | シリアルカメラ | 撮って、送って、また眠る |
| 5 | 溶存酸素の遠隔計測 | RS485 拡張基板(5V 設定) | ハンナ社の蛍光式 DO プローブ | 水の中の酸素を、遠くから見る |
同じメイン基板のまま、拡張基板を替えるだけで、距離・土壌水分・接点・画像・溶存酸素と、性質のまったく違うデータを扱えました。
1・2・5 は、同じ RS485 拡張基板です(5 は 5V 設定で使用)。つなぐセンサーが変わっても、基板はそのままで、読み出し方の違いはファームウェアの側で吸収しています。
推し① 拡張基板は「まずユニバーサル基板、固まったらプリント基板」
冒頭の写真を見ると、拡張基板には 2 種類あることがわかります。
- RS485 拡張基板(緑のプリント基板):センサー用の電源と RS485 の通信回路を載せた基板
- ブレーカー状態検出用・シリアル+SD カード拡張基板(黄色いユニバーサル基板):はんだ付けで手作りした基板
RS485/Modbus のセンサーは当社の主力の用途なので、RS485 拡張基板はプリント基板で用意しています(5 月の記事でも、最初の拡張基板として RS485 インタフェースボードをご紹介しました)。一方、ブレーカーやカメラのように「まず 1 台で試したい」用途は、ユニバーサル基板で当日組んで、動かしながら要件を固めます。
試作はユニバーサル基板で速く、使い道が固まったらプリント基板に。 同じコネクタに載るので、どちらの段階でもメイン基板はそのまま使えます。
推し② 1 本のファームウェアと 1 本のアプリで、5 用途を切り替える
もともと、用途ごとにファームウェアもスマホアプリも別々に作っていました。これはこれで動くのですが、デモのたびに書き込み直したり、アプリを入れ替えたりするのは不便です。
そこで、5 つの用途を 1 本のファームウェアに同梱し、設定で切り替えるようにしました。スマホアプリも 1 本にまとめ、届いたデータの種類に応じて、表示を自動で切り替えます。
スマホから、その場で切り替える(BLE)
メイン基板は、電源を入れた直後やリセットした直後の 60 秒間だけ、Bluetooth(BLE)で接続を受け付けます。デモの流れはこうです。
- 拡張基板を載せ替えて、リセットボタンを押す
- スマホアプリで基板を探して接続する
- 使いたい用途を選ぶ
- 「計測」を押すと、その場で値が表示される

用途を選ぶと、その場で切り替わります。この画面ではハンナ社の溶存酸素センサー(HI7640-58)を選んだところ。装着すべき拡張基板の指定(RS485 拡張基板を 5V 設定で使う)もあわせて表示されます。
再起動も LTE-M の送信も待たずに、選んだ用途に切り替わります。電池で動かす機器なので、BLE を開けておくのは起動直後だけにしています。
遠くから切り替える(MQTT)
設置済みの基板は、クラウドから MQTT で設定を送って切り替えることもできます。メイン基板は送信の直後だけ設定を受け取るので、次に起きたときに反映されます。
拡張基板の取り違えも、画面でわかる
拡張基板は 1 枚ずつしか載せられません。選んだ用途と載っている基板が食い違うと、センサーから応答がありません。そのときは、アプリが 「装着すべき拡張基板は『RS485 拡張基板』です」 のように、どの基板が必要かまで表示します。デモの現場で起きがちな取り違えに、その場で気づけます。
BLE を載せても、プログラム領域に収まった
5 用途と BLE を 1 本にまとめるうえで、心配だったのが ESP32 のプログラム領域の大きさです。
実測すると、容量を大きく左右したのはセンサーの処理ではなく、BLE の実装に何を使うかでした。Arduino 環境で標準的な BLE の実装(Bluedroid)では、用途の処理を載せる前の時点で、プログラム領域の 93.1% を使ってしまいます。軽量な NimBLE に替えると、5 用途と BLE をすべて載せても 54.1% に収まりました。
半完成品としての LTE-M v2 基板
5 月の記事で、ELmote® LTE-M モデルの活用方針として、次の 2 つを挙げていました。
- 既製品では対応が難しい、特殊な案件への対応
- 自分で LTE-M デバイスを作りたい方への、半完成品としての提供
今回の 5 つの用途は、この 2 つの方針を具体的な形にしたものです。電源・通信・省電力の土台はメイン基板が受け持ち、用途ごとの違いは拡張基板とファームウェアの一部に閉じ込められています。新しい用途は、拡張基板を 1 枚と、その用途の処理を足すだけで始められます。
正直なところ
- 拡張基板は 1 枚ずつしか載せられません。距離とカメラを 1 台で同時に、といった使い方には、拡張基板の側で対応する必要があります
- BLE でつなげるのは起動直後の 60 秒間だけです。電池の持ちを優先した割り切りです
- MQTT での切り替えは、次に基板が起きたときに反映されます。すぐに切り替えたいときは BLE を使います
まとめ
- LTE-M v2 基板は、拡張基板を替えるだけで、距離・土壌水分・接点・画像・溶存酸素の 5 つの用途に対応できた
- 拡張基板は、試作はユニバーサル基板で速く、使い道が固まったらプリント基板に。どちらもメイン基板はそのまま
- 5 用途を 1 本のファームウェアと 1 本のアプリにまとめ、スマホから BLE でその場で切り替えられる
- センサー・接点・カメラなど、用途に合わせた拡張基板の試作(ユニバーサル基板でのスピード試作から)
- LTE-M / LoRaWAN による、電池駆動の IoT 機器の開発と検証
- クラウド・スマホアプリまで含めたシステム構築
参考情報
- 当社 IoT シリーズ「ELmote®」に LTE-M モデル登場
- 見張りの電波はキャリアに任せる ― 自社 LTE-M v2 基板でつくる、ゲートウェイなしのブレーカー監視
- 電波で"土の水分"を読む ― センシフィア社の SFDT 方式センサーを LoRaWAN と LTE-M でつなぐ(記事①)
- 撮って、送って、また眠る ― 拡張基板 1 枚で LTE-M v2 基板を電池駆動 IoT カメラにする(記事②)
- 水の中の酸素を、遠くから見る ― 蛍光式 DO プローブを LTE-M でつないでみた(記事④)
- LTE-M を活用したイベント駆動型 IoT カメラの開発
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