はじめに
溶存酸素 (DO) は、水の中にどれだけ酸素が溶けているかを示す値です。養殖の生け簀、排水処理の曝気槽、河川や湖沼の監視と、継続して見ておきたい現場が多くあります。
一方で現場では、コントローラーの画面を人が見に行く運用がまだ残っています。異常に気づくのが見回りのタイミング次第、という状態です。
「当社の LTE-M デバイスにつなげないか」。今回の出発点はそこでした。
なぜ、遠くから見たいのか
DO は、下がると生き物が死ぬ値です。養殖なら酸欠、排水処理なら活性汚泥の処理性能の低下に直結します。しかも気づいたときには手遅れになりやすい。水温が上がる夏場、機械が止まった夜間と、条件が重なると一気に進みます。
だからこそ、人が見に行かなくても値が手元に届く仕組みに意味があります。
お借りしたプローブ
今回、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社のご厚意で、蛍光式の溶存酸素プローブ (HI 7640-58) とコントローラー (HI 520) をお借りしました。
蛍光式は、光を当てたときの蛍光の応答から酸素濃度を求める方式です。古くからある隔膜電極式と違い、隔膜や電解液の交換が要らないのが一般的な利点とされています。現場に据えっぱなしにする用途では、これは大きな差になります。

プローブ側面には仕様(測定範囲 0〜50 ppm、動作温度 −5〜50 ℃、耐圧 2 bar)が印字されています。
今回の構成
プローブとコントローラーの間は RS485 でつながっています(これは同社の製品ページに「入力チャネル:1 つのデジタル入力(RS485 インターフェース)」として公開されている仕様です)。
当社の LTE-M v2 基板には、RS485 の拡張基板があります。つまり、物理的にはそのままつながるわけです。
[蛍光式 DO プローブ]
│
│ RS485
▼
[RS485 拡張基板
+ LTE-M v2 基板]
│
│ LTE-M
▼
[MQTT ブローカー]
│
▼
[スマホアプリ]
この構成、実は土壌水分センサーの記事とまったく同じ基板・同じ拡張基板です。違うのは、つないだセンサーとファームウェアの一部だけです。
推し① 基板を起こさずに、新しいセンサーが 1 つ増えた
今回、新しい基板は一枚も作っていません。
当社の LTE-M v2 基板は、用途ごとに拡張基板を差し替える設計です。RS485 の拡張基板は、距離センサーにも土壌水分センサーにも使ってきたものです。今回もそれをそのまま使いました。
ファームウェア側も、以前から用途ごとのアプリを 1 本のファームウェアに同梱する仕組みが動いています。そこにアプリを 1 つ足しただけです。プログラム領域の使用量は 54.1% で、まだ半分近く余っています。
「拡張基板を替えれば、用途が替わる」。この設計の実例が、また 1 つ増えました。
推し② 純正コントローラーと同じ値が出た
同じプローブについて、純正コントローラーの画面表示と、当社デバイスが受け取った値が一致しました。
当社デバイスで受信した値(水道水に浸けた状態):
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 溶存酸素 | 7.57 〜 7.62 mg/L |
| 水温 | 25.6 〜 25.7 ℃ |

溶存酸素と水温が、他のセンサーと同じ画面に並びます。
値が出るまでの流れは、他のセンサーと変わりません。デバイスは普段眠っていて、決まった時間に起きて測り、LTE-M で送って、また眠ります。ゲートウェイは要りません。
正直な課題
ここは隠さずに書いておきます。
- メーカーが想定した接続方法ではありません。 純正コントローラーが持つ表示・制御・警報といった機能は使えません
- 保証やサポートの対象外になると考えられます
- 校正はメーカー純正の手順に従う必要があります。 当社デバイス側で校正はできません
- 長時間の連続運転、電池での運用可否はまだ検証していません
つまり今回できたのは、「純正の仕組みを置き換える」ことではなく、「純正の仕組みが見ている値を、遠くからも見られるようにする」ことです。現場のコントローラーはそのまま活かしたうえで、遠隔監視を足す。そういう使い方を想定しています。
まとめ
- 工業用の水質センサーを、既存の LTE-M デバイスにつないで遠隔で読めることを確認した
- 新しい基板は起こしていない。拡張基板はそのまま、ファームにアプリを 1 つ足しただけ
- 純正コントローラーの表示と同じ値が出た。ただし純正の機能を置き換えるものではない
水質の遠隔監視は、「異常に気づくのが遅れると取り返しがつかない」タイプの用途です。現場にすでにある計器を活かしながら、値だけを遠くへ運ぶ。当社のような IoT インテグレーターの出番はそこにあります。
- 水質センサーをはじめとした、既設計器の遠隔監視化のご相談
- RS485/Modbus インタフェースのセンサーの IoT 化(LoRaWAN / LTE-M どちらでも)
- 用途に合わせた拡張基板の試作から、クラウド・スマホアプリまでのシステム構築
謝辞
本検証で使用した蛍光式溶存酸素プローブおよびコントローラーは、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社のご厚意によりお借りしました。貴重な機材をお貸しいただいたことに、深く感謝いたします。
参考情報
- 電波で"土の水分"を読む ― センシフィア社の SFDT 方式センサーを LoRaWAN と LTE-M でつなぐ
- 撮って、送って、また眠る ― 拡張基板 1 枚で LTE-M v2 基板を電池駆動 IoT カメラにする
- 当社 IoT シリーズ「ELmote®」に LTE-M モデル登場
- 水質の遠隔監視についてのご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ
