カナダ発LoRaWANの実力派「TEKTELIC」— 4つのセンサーを日本のAS923環境で徹底検証してみた

カナダ発LoRaWANの実力派「TEKTELIC」— 4つのセンサーを日本のAS923環境で徹底検証してみた

カナダ発LoRaWANの実力派「TEKTELIC」— 4つのセンサーを日本のAS923環境で徹底検証してみた

LoRaWANのデバイスというと、日本では欧州や中国のメーカーが話題に上がることが多く、「TEKTELIC(テクテリック)」という名前を聞いたことがある方はまだ少ないかもしれません。しかし海外の産業用IoTの現場では、堅牢なハードウェアで確かな評価を持つメーカーです。 地元カルガリー市のスマートシティ事業にも機器を供給しています。

今回、TEKTELICより日本向け(AS923-1)の機材提供を受け、ゲートウェイ1台とセンサー4種を、3つの異なるLoRaWANネットワークサーバー(ChirpStack / The Things Network / TEKTELIC KONA Core)で検証しました。結論から言うと、4デバイス×3ネットワークサーバーのすべての組み合わせで、デバイスの登録からデータの可視化までエンドツーエンドで動作を確認できました。本記事ではその内容と、TEKTELICというメーカーの魅力を紹介します。


TEKTELICとは

TEKTELIC Communicationsは、2009年にカナダ・カルガリーで設立された通信機器メーカーです。LoRaWANのゲートウェイ、センサー、ネットワークサーバー、アプリケーションまでを一社で提供する「エンドツーエンド」型のベンダーで、LoRaWANエコシステムの中でも数少ない存在です。

  • キャリアグレードの通信機器開発を背景に持ち、ISO 9001:2015認証を取得
  • AWS IoT Core for LoRaWAN のデバイス認定プログラムに初期から参加したゲートウェイベンダーの一つ
  • ビルオートメーション、アセットトラッキング、コールドチェーン、スマート農業など産業向けソリューションに注力

「デバイスもゲートウェイもサーバーも同じメーカー」という構成は、トラブル時の切り分けや責任の所在が明確になるという、産業用途では見逃せないメリットがあります。

Products


検証した4つのセンサー

今回検証したのは、いずれもLoRaWAN Class Aの電池駆動センサーです。用途がきれいに住み分けられています。

1. BREEZE — CO2・室内空気質センサー

NDIR方式のCO2センサーに加え、温度・湿度・気圧を1台で測定するIAQ(室内空気質)センサー。会議室の換気管理やオフィスの快適性モニタリングの定番です。検証では約5分間隔でデータが届き、人の出入りに応じてCO2が400〜1,700ppmの間で動く様子がリアルタイムに確認できました。電池残量もペイロードに含まれます。

BREEZE

2. COMFORT — 温湿度スマートルームセンサー

室内環境モニタリングのベーシックモデル。温度・湿度をシンプルに押さえたいオフィス・住宅・施設向けで、リーク(漏水)検知などの派生モデルも同シリーズに揃っています。小型・軽量で、壁面にさっと設置できるのが好印象でした。

COMFORT

3. TUNDRA — 冷凍・冷蔵環境向け温度センサー

コールドチェーン(低温物流・食品保管)向けの温湿度センサー。検証では実際に冷凍庫に入れ、-20℃前後の環境から安定してデータが届くことを確認しました。一般的な民生センサーでは動作保証外になる温度域をカバーできるのは、寒冷地カナダのメーカーらしい強みです。

TUNDRA

4. CLOVER — 農業向け土壌センサー

土壌水分・地温・照度を測定するスマート農業向けセンサー。検証では日照の変化(最大9,000lux超)と土壌水分の推移がきれいに取得できました。ハウス栽培の潅水管理や露地の環境記録など、日本の農業IoTでもそのまま使えるイメージが持てます。

CLOVER

ゲートウェイは小型の屋内向け8チャネル機 KONA Micro(AS923-1対応)を使用しました。手のひらサイズながらバックアップ電池を内蔵し、店舗・オフィス規模のLoRaWAN網なら1台で十分カバーできます。

KONA Micro Gateway


検証の構成

検証のポイントは「同じデバイス・同じゲートウェイを、3種類のネットワークサーバー(NS)で動かす」ことです。LoRaWANはNSを選べるのが特長ですが、実際に乗り換えて動かした事例はあまり公開されていません。

[BREEZE / COMFORT / TUNDRA / CLOVER]
        │  LoRaWAN AS923-1 (920MHz帯)
[KONA Micro ゲートウェイ]
        │  ① Semtech UDP / ② Basics Station / ③ MQTT
[ChirpStack / The Things Network / KONA Core]
        │  Webhook (HTTP Integration)
[自社ダッシュボード(ELSPINA VEINZ開発)]

3つのNSそれぞれで、ゲートウェイ接続 → デバイスのOTAA登録 → ペイロードデコード → Webhookでの外部連携、までを一通り実施しました。

ChirpStackThe Things Network (TTS)TEKTELIC KONA Core
性格オープンソース・自営大手マネージドメーカー純正・マネージド
GW接続方式Semtech UDP等Basics Station(認証付き)MQTT(TLS+クレデンシャル)
デバイス登録手動手動+リポジトリ純正プロファイル内蔵
外部連携HTTP/MQTTWebhookHTTP v2 Integration
向く場面自社運用・フルコントロール試作・小規模TEKTELIC機器での商用構成

KONA Coreならではの体験

メーカー純正NSであるKONA Coreは、他の2つと勝手が違う部分がいくつかありました。

  • ゲートウェイ接続が証明書不要のMQTTクレデンシャル方式で、ポータルで発行したユーザー名/パスワードをゲートウェイに設定するだけ。Basics Stationの証明書まわりの作業に慣れていると拍子抜けするほど簡単です
  • BREEZEなど自社センサーのデバイスモデルが最初から登録されているため、機種を選ぶだけで無線パラメータが整います
  • ペイロード変換は「Data Converter」(JavaScript)で行い、HTTP v2 Integrationでカスタムヘッダー付きWebhookを送れます

(KONA Core画面: 左=ゲートウェイ登録、右=4デバイスすべてOnline) KONA Core Gateways / Devices


可視化: 自社ダッシュボードへの連携

最終段は、当社 ELSPINA VEINZ inc. で開発しているIoTダッシュボードです。各NSのWebhook(HTTP Integration)を受けて時系列DBに保存し、4デバイスをリアルタイムに可視化しています。NSごとにWebhookのJSONスキーマは異なりますが、受信側で吸収する設計にしているため、どのNSに切り替えてもダッシュボードはそのまま使えます。

TEKTELIC IoT Sensor Monitoring Dashboard

BREEZEのCO2の日内変動、冷凍庫内のTUNDRAの-20℃、CLOVERの日照と土壌水分——4種のセンサーの個性がひと目で分かります。


検証を終えて: TEKTELICのメリット

  1. エンドツーエンドを一社で完結できる デバイス・ゲートウェイ・NSまで同一メーカーで揃うため、商用案件で問題が起きたときの切り分けと責任の所在が明確です。実際、検証中の細かな疑問もメーカーサポートと直接やり取りでき、対応は丁寧でした。

  2. ハードウェアの守備範囲が広い 冷凍庫内の-20℃で動くTUNDRAに象徴されるように、産業環境を前提にした設計。オフィス(BREEZE/COMFORT)から農地(CLOVER)、コールドチェーン(TUNDRA)まで、同じ仕組みの上で多用途に展開できます。

  3. どのネットワークサーバーでも動く標準準拠 ChirpStack、TTN、KONA Coreのすべてで問題なく動作しました。「OSSで自営したい」「まずはTTNで試したい」「純正マネージドに任せたい」——顧客の要件がどれでも、同じデバイスで対応できます。

  4. 日本のAS923-1に正式対応 ゲートウェイ・センサーとも日本向け周波数設定で提供され、今回の検証もすべて920MHz帯(AS923-1)で実施しています。

LoRaWANのデバイス選定で「堅牢さ」「用途の広さ」「NSを選ばない可搬性」を重視するなら、TEKTELICは有力な選択肢です。当社では今回の検証環境(3種NS+ダッシュボード)をそのまま使ったPoC支援も可能ですので、興味のある方はぜひお問い合わせください。


参考リンク