はじめに
当社では、これまで LoRaWAN を中心としたLPWANビジネスを展開してきましたが、LTE-M(LTE Cat.M1) に関するお問い合わせも数多くいただいてきました。
- 「設置場所にLoRaWANゲートウェイを置けない」
- 「広域に点在するデバイスから、ピンポイントでデータを取りたい」
- 「双方向の制御を、もう少しレスポンス良くやりたい」
こうしたご要件にお応えするために、ここしばらく、当社オリジナルのIoTデバイスシリーズ 「ELmote®(エルモーテ)」 の新ラインナップとして、LTE-Mモデル の開発を進めてきました。
仕様検討、回路設計、基板発注を経て、ようやく 試作基板が手元に届き、実際に組み上げて動作検証することができましたので、現時点の様子をご紹介します。

ELmote®シリーズ LTE-Mモデルとは
ELmote®は、当社のオリジナルIoTデバイスシリーズの総称です。今回ご紹介するのは、その中でも 完全にゼロから設計 した LTE-Mモデル で、次の要素から構成されています。
- LTE-Mメイン基板:LTE-Mモジュール+ESP32を搭載
- 拡張基板:用途に応じてセンサーインタフェースを切り替え可能
- 専用組電池:容量 12Ah の大容量バッテリーを内蔵
- 防水ケース:屋外設置を前提とした構造
最初に用意した拡張基板は、RS485インタフェースボード です。当社の主力ユースケースであるRS485/Modbusセンサーをそのままぶら下げられるようにしています。今後、用途に応じて拡張基板のラインナップを増やしていく予定です。
なぜESP32なのか?
LTE-M デバイスをはじめとした組み込み系機器の領域では、プロフェッショナル用途として STM32系MCU を採用するケースが多いです。当社でも、お客様案件では当然STM32系を選択肢に入れています。
しかし、ELmote®シリーズのLTE-Mモデルでは 意図的にESP32 を搭載しています。
理由は、後述する 「半完成品としての提供」 という活用方針にあります。Arduino IDEやESP-IDFが整備されたESP32は、ファームウェア開発の敷居がぐっと下がり、ご自身でLTE-Mデバイスを作りたい方 にとって扱いやすいプラットフォームだからです。
動作検証してみた
試作基板を組み上げ、以下の流れで一通りの動作を確認しました。
1. ケースへの組み込み
まずは、メイン基板+RS485拡張基板+12Ah組電池を 防水ケースに組み込み。サイズ感、ケーブルグランドからの引き出し、アンテナの取り回しなど、設計通りに収まることを確認しました。
実機を組んでみると、図面では見えなかった改善点が必ず出てきますね。ここで何点か、製品版に向けた 筐体側の改善ポイント が抽出できました。
2. RS485/Modbusセンサーとの接続
最初の拡張基板である RS485インタフェースボード に、当社で取り扱いのあるRS485/Modbusセンサーを接続。 (以前のブログでご紹介したような)距離センサーを使い、レジスタからの値読み出しまで確認しました。
3. Soracom plan-X3 + MQTTでクラウドへ
通信回線は Soracom plan-X3 のSIMを使用しています。LTE-Mの 省電力性 を活かしつつ、必要なときに必要なだけ通信する構成です。
今回の動作シナリオは以下の通り:
[ELmote® LTE-Mモデル (ESP32 + LTE-Mモジュール)]
↓ 定期インタバル(120秒)でwake-up
├─ RS485でセンサーから値を取得
├─ MQTT publish(センサー値・電池電圧・基板温度など)
└─ publish直後、数秒間だけ subscribe(設定値変更の受け取り待ち)
↓↑ LTE-M / Soracom plan-X3
[MQTTブローカー]
↑↓
[スマホアプリ(テスト用の独自アプリ)]
ポイントは、 publish直後に数秒だけsubscribeする という挙動です。
LTE-Mデバイスは電池駆動が前提のため、常時subscribeしていると電池がもちません。そこで「データを送った直後だけ、サーバー側からの設定変更コマンドを受け取れる時間を開ける」という、いわゆる window制御 を実装しています。
4. スマホアプリでの可視化と設定変更
最後に、可視化と双方向制御の検証です。テスト用に作った独自スマホアプリで、デバイスからpublishされたデータをリアルタイム表示し、サンプリング間隔の変更コマンドを送り込みます。

実機のIMEI、最新の受信時刻、距離・センサー温度・基板温度・電池電圧が一目で確認できます。下部のサンプリング間隔スライダーで値を変更し「送信」すると、次回のwindow期間中にデバイス側がその値を受信し、以降のインタバルに反映される——という仕組みです。
定期publish、windowedなsubscribe、設定値の永続化まで、一連の流れが 狙い通り動作 することが確認できました。
なぜ自前のLTE-Mデバイスを作るのか
ここまで読むと「LoRaWANもLTE-Mも、既製品ならいくらでもあるよね?」と思われるかもしれません。実際、その通りです。
中国などで製造される大量生産品には、コスト面では全く敵いません。当社も、既製品で済む案件には、迷わず既製品をご提案します。
それでも自前のLTE-Mデバイスを作る理由は、次の 2つの活用 を見据えているからです。
1. 既製品では対応が難しい特殊案件への対応(ファームウェアレベルの作り込みを含む)
2. 自身でLTE-Mデバイスを開発・実装したい方のための半完成品としての提供
1. 特殊案件への対応
既製品は、汎用的な用途に合わせて設計されています。そのため、
- 「このセンサーと、この通信間隔と、こんな振る舞いをしつつ、省電力モードで動かしたい」
- 「ハード側で◯◯の制御も同時にやりたい」
- 「クラウド側のプロトコルが特殊で、既製品ファームでは対応できない」
といった 少しトリッキーな要件 が出てくると、既製品では手が出せなくなります。
ELmote®シリーズのLTE-Mモデルは、回路・筐体・ファームすべてを自社でコントロール できるので、こうした特殊案件にもきめ細かく対応できます。これは、当社がやってきた 受託開発との相性が非常に良い 領域です。
2. 半完成品としての提供
もう一つは、 「LTE-Mデバイスを自分で作ってみたい」 という方への半完成品の提供です。
LTE-Mは魅力的な通信技術ですが、ゼロから自作するのは結構ハードルが高いです。
- 電源回路・組電池まわりの設計
- LTE-Mモジュールの組み込みと法的認証
- 防水筐体・ケーブルグランド・アンテナの選定
- 省電力で動くファームウェア基盤
このあたりを 一通り完成させた状態 でお渡しできれば、開発者の方は 自分が本当にやりたいアプリケーションロジック に集中できます。
ESP32を選択しているのは、まさにこの 「触りやすさ」 のためです。
試作で見えた、製品化に向けた課題
評価基板を実際にいじってみると、机上では見えてこないことが必ず出てきます。今回も、
- スイッチボタン類の配置と種類
- 拡張基板コネクタの仕様と組み立て性
- ネジ位置やサイズ
など、製品版に向けて改善すべき項目をしっかり抽出 することができました。
逆に言うと、ここまで「動くもの」を作って初めて、 製品としての完成度を上げるための議論ができる わけです。
今後のスケジュール
ELmote®シリーズのLTE-Mモデルは、今年度内のなるべく早い段階で製品版リリース を目指して、現在改良を進めています。
- 試作基板で得られた知見を反映した改版設計
- 拡張基板のラインナップ拡充(RS485以外のインタフェース)
- ファームウェアテンプレートの整備(半完成品提供のための土台)
まとめ
今回は、当社オリジナルのIoTデバイスシリーズ 「ELmote®」 のLTE-Mモデル試作機について、現時点の動作検証の様子と、製品化の狙いをご紹介しました。
- ELmote®シリーズのLTE-Mモデルは、12Ah組電池+防水ケース+ESP32搭載LTE-M基板+拡張基板で構成
- Soracom plan-X3を使い、MQTT publish+windowed subscribeで双方向制御を実現
- テスト用スマホアプリで可視化と設定変更まで動作確認済
- 狙いは「特殊案件対応」と「半完成品としての提供」の2軸
- 今年度内のなるべく早い段階で製品版リリース予定
「こんな用途でLTE-Mを使いたいんだけど、既製品では難しそう」
「自分でLTE-Mデバイスを作ってみたいが、ゼロから始めるのはハードルが高い」
そんなご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。ELmote®シリーズの活用も含めて、最適な構成をご一緒に考えます。
製品版のリリース時には、改めて本ブログでお知らせいたします。続報をお楽しみに!
