市販のガイガーカウンタをIoT化!LPWAN通信で放射線量を遠隔監視

市販のガイガーカウンタをIoT化!LPWAN通信で放射線量を遠隔監視

市販のガイガーカウンタをIoT化!LPWAN通信で放射線量を遠隔監視

はじめに

地震大国日本。2011年の東日本大震災以降、地震が起こる度に放射線量の変化を気にしなければいけない現実があります。

現在、公共の場所には大型の放射線量計が設置され、継続的に稼働していますが、個人レベルで気になる場所の放射線量を継続的に計測したいというニーズも存在します。

そこで今回は、市販されているGM管方式の放射線検出器をIoT化し、LPWAN(LoRaWAN、LTE-M)により、サーバーにデータをアップロードするシステムを構築しました。検出器とLPWAN通信デバイスとの接続方法、必要な波形整形回路の設計など、実装の詳細をご紹介します。


GM管検出器とは?

GM(ガイガーミューラ)管は、放射線を検出するための古典的かつ確立された技術です。

動作原理

GM管は、不活性ガスが封入された円筒管の電極に200V程度の高圧をかけることで動作します。放射線(ベータ線やガンマ線)が入射すると、ガス中で電離が起こり放電が発生します。この放電パルスを検出することで、放射線の入射を確認できます。


GM管検出器の構成

GM管検出器の構成

検出器の選定

放射線検出器には、GM管方式以外にもPINダイオード方式などがありますが、今回はGM管方式の市販検出器を使用しました。GM管方式は感度が高く、比較的安価で入手可能なため、個人レベルでのIoT化に適しています。


検出パルスの特性分析

LPWAN通信デバイスと接続する前に、まず検出器から出力されるパルス信号の特性を詳しく調べました。

今回、以下のLPWAN通信デバイスで検出可能か検証しました:

  • LoRaWAN通信デバイス: Dragino社製 LSN50v2、SN50v3-LB
  • LTE-M通信デバイス: 当社オリジナル基板

パルスの特性

オシロスコープで測定した結果、以下の特性が確認されました:

edit   Note
検出パルスの特性:
- 電圧レベル:5Vの負パルスが発生
- パルス幅:約400μs
- 波形:なまりがある
- 注意点:LPWAN通信デバイス入力端子の入力抵抗値によっては取り込めない可能性がある

検出パルスの様子

オシロスコープで観測した検出パルス波形

この波形を見ると、パルス幅が短く、波形になまりがあることが分かります。LPWAN通信デバイスの入力特性によっては、このままでは正しく検出できない可能性があります。


波形整形回路の設計

LPWAN通信デバイスの入力特性に依存しない、確実な信号検出を実現するため、波形整形回路を追加しました。

回路設計のポイント

波形整形回路は以下の2つの機能を持ちます:

  1. シュミットトリガインバータ:なまった波形を鋭いデジタル信号に変換
  2. オープンコレクタ出力回路:LPWAN通信デバイス側のロジックレベルに整合

波形整形回路

波形整形回路の回路図

この回路により、入力側の負パルスを、LPWAN通信デバイスが確実に検出できる明瞭なデジタル信号に変換できます。


実装の様子

波形整形回路は、小型のユニバーサル基板に実装し、検出器本体に組み込みました。


検出器への波形整形回路実装の様子

検出器に波形整形回路を実装した様子

整形後の波形

波形整形回路を通した後のパルス波形をオシロスコープで確認しました。


波形整形後の検出パルス

波形整形後の検出パルス - 明瞭なデジタル信号に変換


波形整形により、なまりのない鋭いパルスが得られ、LPWAN通信デバイスで確実に検出できるようになりました。


LPWAN通信デバイスとの接続

波形整形回路を追加したことで、複数のLPWAN通信デバイスとの接続に成功しました。

1. LoRaWAN通信デバイス(SN50v3-LB)

Dragino社製のSN50v3-LBは、カウンターモードを持つLoRaWANセンサーデバイスです。

システム構成


LoRaWAN通信デバイスにおける構成

LoRaWAN通信デバイスを使用したシステム構成


波形整形回路の出力を、SN50v3-LBのパルスカウンター入力端子に接続します。デバイスは設定した時間間隔(例:1分ごと)でパルス数を累積し、The Things Stack(TTS)にアップリンクします。

実際のデータ


TTSにアップされた1分ごとのカウント値(累積値)

The Things Stackにアップロードされた放射線カウント値(累積値)

TTSのコンソールで、1分ごとの累積カウント値が確実に記録されていることが確認できます。この累積値の差分を取ることで、時間あたりの放射線量(CPM: Counts Per Minute)を算出できます。


2. LTE-M通信デバイス(当社オリジナル基板)

当社で開発したLTE-M通信デバイスでも同様の検証を行いました。

システム構成


LTE-M通信デバイスにおける構成

LTE-M通信デバイスを使用したシステム構成


LTE-M通信デバイスは、LoRaWANに比べて通信速度が速く、より頻繁なデータ送信が可能です。1分ごとのカウント値を、LTE-M網経由でクラウドサーバーに送信します。

データの可視化


サーバにアップされた1分ごとのカウント値

サーバーにアップロードされた1分ごとのカウント値グラフ

グラフで時系列データを可視化することで、放射線量の変化を直感的に把握できます。

Slack通知


Slackへ通知された様子

Slackへのリアルタイム通知

設定した閾値を超えた場合、Slackに自動通知することも可能です。これにより、異常値を即座に検知し、適切な対応を取ることができます。


実装のポイントと工夫

1. 波形整形の重要性

市販の検出器の出力パルスは、そのままではLPWAN通信デバイスで確実に検出できない可能性があります。波形整形回路を追加することで、デバイスの入力特性に依存しない確実な検出が可能になりました。

2. 通信方式の選択

check_circle   Tips
LoRaWAN vs LTE-M:
- LoRaWAN:長距離通信が可能、低消費電力、通信コストが安い
- LTE-M:高速通信、頻繁なデータ送信が可能(通信コストがやや高い)

用途や設置場所に応じて、最適な通信方式を選択できます。

3. データの活用

収集したデータは、以下のような活用が可能です:

  • リアルタイム監視:Webダッシュボードでの可視化
  • 異常検知:閾値を超えた場合の自動通知
  • 長期分析:データベースに蓄積して統計分析
  • 比較分析:複数地点のデータを比較

応用の可能性

このシステムは、放射線監視以外にも様々な用途に応用できます。

環境モニタリング

  • 工場・研究施設:作業環境の安全管理
  • 医療施設:放射線管理区域の監視
  • 廃棄物管理:放射性物質を含む廃棄物の保管場所監視

広域監視ネットワーク

複数の検出器を配置し、広域の放射線分布をネットワークで監視することも可能です。LPWANの長距離通信特性を活かせば、広範囲をカバーする低コストの監視網を構築できます。

防災・減災

地震発生時に、原子力施設周辺の放射線量変化を即座に検知し、迅速な避難判断に役立てることができます。


まとめ

今回は、市販のGM管方式ガイガーカウンタをLPWANでIoT化し、放射線量を遠隔監視するシステムを構築しました。

check_circle   Tips
本プロジェクトのポイント:
- 市販の検出器をそのまま活用可能
- 波形整形回路により確実な検出を実現
- LoRaWANとLTE-Mの両方で動作確認
- リアルタイムでのデータ監視と通知が可能
- 低コストで個人レベルでも実現可能

地震や原子力施設の事故など、万が一の事態に備えて、個人レベルで放射線量を継続的に監視できる仕組みを持つことは、安心・安全な生活のために有意義です。

LPWAN技術の進化により、このようなIoTシステムの構築はますます容易になっています。皆さんも、身近な環境の「見える化」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


参考情報

今回使用したDragino社製LoRaWANデバイスSN50v3-LBは、当社ECサイトでもお取り扱いしております。パルスカウンター機能を持つため、今回のような用途に最適です。

また、LTE-M通信デバイスについてもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。